シドニー生活

アラフォーの医療系大学院留学。2018年現在は修士1年目(MPhil)。海外博士(PhD)への道を綴ります。

もっと落ち武者

火曜日の話

火曜午後、気分を変えようと図書館で勉強していると、Sから「コーヒーしようぜ」ってメールが。その時の話。

私が思うように研究が思うように進んでいないこと、先週グラントを獲得出来なかったことなどを話したら、Sが「それらは普通のこと。お前はラッキーなんだからそのまま焦らずに頑張ればいい。」って言われた。

Sの悩み

PhDのSの予定は詰まっている。2つの学会に行く予定。Sはスリランカ出身なのでシンガポール以外の渡航には全てビザが必要。

  • 7月(Oral, Gelgium)
  • 9月(Poster, Glosgow)

7月のベルギーのビザは取得済み。そして9月のUKのビザは申請中につき、SのパスポートはUK大使館にあるらしい!笑 このままだと今週土曜に出発予定の国際学会はキャンセルの可能性がある。この2つの学会の助成金(PRSS)は大学から3000ドル、スーパーバイザーから3000ドル、合計6000ドルすでに持っている。もちろんそれぞれの学会からOral, Posterのアクセプトもされている。お金も発表データも全て整っているのに、問題はビザだけ。さらにSは私とは全然違って優秀!大学の奨学生(数万人いる学生の中で年間数人しか取れない奨学金をとって入学している)の時点で、とんでもないことなんだよ!私よりむしろ身元も保証されている。なのに国籍だけの問題でビザに振り回される。もうパスポートも取り返せないし、かなりストレスのご様子。

それとは別件で、論文のイントロの書き直しに3週間費やしているらしい。クオリティーを上げるためにスーパーバイザーに2度の書き直しを食らったらしく、当初は2日でできると思ったけど、ストレスであまり頭が動かないらしく3週間も費やしてるらしい。もうストレスで頭の回転落ちてるらしい。だから私が「初めての論文に想像以上に時間がかかってストレスだ」と言う感覚はノーマルだし、むしろもっとかかるのが普通だと諭される始末。私ももっと自分に優しくならないと。自分に難しい課題を与えすぎて、自分で首を締めているようなものだなと我に返った。

Sも言ってた。みんな色々と悩んでいるんだよ。それが普通だよ。だからどんどんやるしかない、突き進もうって話でまとまる。そして「もう祈ってくれ!」と言われたけど、宗教色の弱い私は何に祈ればいいのか不明。ご先祖様?仏様?何に祈ればいいのか。神に今回は祈ってみることに。「せめてパスポートが取り返せますように」一応聞いたらUK大使館はシドニーにあるので、パスポートを奪いに乗り込むことは可能ではある?と思う笑。

Sの友人SHの悩み

SHはSと同じスリランカ出身。私は直接話をしたことはないけど、同じFacultyでPhD4年目。SHももちろんフルサポートの奨学生。

SHはPhDの学生としては最後の参加となる国際学会9月にGlasgowへ行く予定。Oralでアクセプトされていて、PRSS3000ドル(大学の助成金)も獲得している。もう全てが揃っているのに、なぜかUK大使館からVisaをリジェクトされた。

何度も書くけど、つまり、SHはスリランカ出身だけど、身元もしっかりしている、優秀なPhDの学生(むしろその辺のを歩いているオーストラリア人より優秀)、学会のための助成金3000ドルも大学のコンペを勝ち抜いて取得(私はPRSS落ちた)、OralPresentaionのアクセプトもすでにされている。あとはビザだけ。なのに火曜の午前にUK大使館が下した決断「UKに入国するビザはあげません。申請はリジェクト!」

え?まじ?そんなアンフェアなことがこの現代に起きていることを私は知らなかった。何1つSHには落ち度がない。ビザ申請時には大学からとスーパーバイザーからのビザ申請のための推薦状も提出しているのに、それでもダメってあるの?もうSHはHopelessじゃない?もう生きていることも嫌になるよね?もう努力も能力も全てが国籍の問題でパーだなんてありえない。そもそもビザの申請のために時間も割いている訳で、、、

SHの話を教えてくれた時にSが言ってた。私はPRSSも落ちたし、来年のグラントも逃した。それはノーマルで、むしろグラントは獲得する方が難しい。それにグラントはいくらでもこれからエントリーができる。いつかは獲得出来る日が来る。でもSHはPhD最後の締めくくりで参加予定の国際学会に参加できない。もう人生でPhD4年生はもう今年しかない。このワンチャン逃したらもう次はないよね、って。

もう本当に聞いた時ショックだった。SとSH、彼らからしたら私の悩みなんて「はぁ?」って一言だよね。いつもSが言っている「お前は日本人に生まれただけでどれだけの手間はない人生か考えたことがないんだよ」と言われる。うんうん、上にも下にも何かと比べたらキリがないのは知っている。それでもやっぱり思う。確かに私はいらぬ書類(ビザ申請書類)を作る必要もないし、悩みは英語力の低さとか、全部の主語が自分。自分の能力とは関係ない外部の力によって全てが閉ざされたSHやSの気持ちを理解するのは難しい。だからこそ、私ももっともっとやらないと。

「もっと落ち武者」はすごく近くにいました。私より落ち武者。もうその辺で惰性的に生きている奴らにSHの爪の垢を煎じて飲ませたい。(昭和の発想ですみません)。そして私も飲みたい、SHの爪の垢。

そして日本人、オンラインでカチカチクリックするだけでビザが申請完了するのに、ビザの手続きを英語に自信ないからとか不安とかの理由でエージェントに依頼するとか、ぬるい環境にいるなって思う。もちろんこのビジネスは必要だし全然否定する気は無い。でも自分で一から頑張ろうという発想すら無い?これの気持ち「誰かにやってもらおう」が問題かも。自分のことは自分でできないなら留学してからどうするの?って話になる。分厚い書類全て自分で整えて、オンラインではなく郵送、毎回指紋10本写真も取られてエージェントなんてなしで手続きを済ませているHDRの学生。たくましいよね。私ももっとたくましくならないと。うん、強くならなきゃ。

 

もっとすごいのは、このSとのコーヒーの帰りに偶然SHとすれ違った。普通に笑顔で挨拶を交わした!数時間前にビザをリジェクトされて本当は心の中は絶望だよね?でもちゃんと笑顔で仕事している。当たり前だけど「偉いなぁ」と思う。私も1つ落ちたぐらいでは落ち込んでいる場合じゃない!何とかしないとね。仕方がないものは仕方がない。うん、それでも手を緩めないことが大切。やらないよりはやったほうがいい。自分の手の届かないところで判断され全てをなくすのは辛いけど、それでも希望を持って前に進む彼らはすごい。私よりずっとずっとすごい。多様性の中に身をおくって、本当に学びが多い。そして疲れる。疲れてしゃーない日々です。

では。