シドニー生活

中年研究者のお話

世界が狭い?それともやつが偉いのか?

ミーティング

つい先日ミーティングしたところだけどまたミーティング。スーパーバイザーがベルギーへ土曜から行くので、その前に初論文を書いている学生の私を心配してのことだと思う。優しいぜ!

毎度の事ながらミーティングするとは言われただけ、他は何も言われてない。貴重な時間を論文のディスカッションパートの方向性についてやるつもりでいた。おかげで、さらに頭の中がまとまって、さらにクリアになった感はある。私の思うことを伝えて先生がそれを英語で正しい表現(keyword)のようなもので表現してくれるだけで、こちらとしても自信がつくという感じ。そして自分のやろうとしている方向性は間違っていないという感覚になる。先生ありがとう。

先生は一からなんて教えてくれない。手取り足取りでは全然無い!うぎゃーーーって感じ。98%放置。2%がこのミーティング、そんなレベル。とにかく自分で本も読んで専門的なことのインプットとアウトプットの同時進行。コースワーク終わっても、こんな修行状態の私。だからサボろうとしたら簡単にさぼれるし、毎日こない学生もいるし、昼からくる学生もいるし、どれだけ自分を律するかが鍵になる。

実はこのミーティングの冒頭で先生にBMJopenの2017のとある論文を見せた。

次の論文はSystematicReviewをやる予定。本当に研究はテーマ決めが全て。日々ResearchTermについては何かアイデアなども含め思いつけば書き留めるようにはしている。でね、今の論文のためのLiteratureReviewをした時に私がやろうとしていたSystematicReviewを見つけてしまった。「もう2017に誰かがやっている!」って思ってアブストしか読んでないが「げげげーー」と思って、それをミーティングで一番最初に見せた。

最初はスーパーバイザーが、私のやりたいテーマでやっている人がいたことを話すとペーパーも見ずに「何年のだ?」「本当か?」しか聞かない。「2017のBMJopenだ」と伝えると、スーパーバイザーの手がペーパーに伸びる。そして無言で蛍光ペンを持って、著者5人中4人にマーカーで線をひく!次は最後のページのReferenceにも線と丸とチェックを入れていく。その数がすごい!で次にデザインを見て「よし」とニヤつく。

そうなの、この論文の著者の一人はスーパーバイザーの元スーパーバイザーで、他の人もスーパーバイザーの知り合い。というかめちゃその人たちを知っていて、スペイン出身だとか、こいつはこれが得意だとか、彼のテクニックはすごいとか今はどこの大学に移ったとか。そしてこのチームはもう解散していることまで笑。もう世界狭く無い?そのうちの一人は今年の初め研究室へ訪問してたらしくて!「まじか世界って狭いな」と思ってしまった。

もっと驚いたのが、私の今座っているデスクの前の学生MがやったReviewを見てこの著者らがインスパイヤーされてMと同じ手法を用いたReviewをやったらしい。笑。このReviewの手法は世界ではまだ比較的珍しいものなので、著者の一人がMの論文をみるなりスーパーバイザーにすぐに問い合わせが彼らから来たらしい。面白い世界だよねー。だから引用文献にもMのもの、そしてMが参考にしたオリジナルのものももちろんのっていた。で、スーパーバイザーがニヤリとしたのは、テーマは私がやりたい事と同じような感じなんだけど、Limitationとしてオーストラリアの論文になぜか限定している。やったね!だから私は丸々とテーマを変える必要は無いのさ!へへへ。この調子でもう少し細かなテーマ決め進めてもいいみたい。オーストラリア限定なだけにこのReviewのレファレンスに乗っている論文の1/4くらいは先生の知っている人またはうちの大学の先生の論文ばかり!まじかーーー「世界は狭いな」ってなるわけさ。そしてスーパーバイザー「偶然にもこの論文まだ見てなかったから学会から帰ったら読むよ、教えてくれてありがとう。面白そうだ。」ってね。

友人にこの論文の一件を話すと友人「世界が狭いわけじゃ無い。お前のスーパーバイザーがそれだけこの業界で顔が広いって事もある。本当のところはこの業界で彼の名前を知らない人はいないんじゃ無い?それぐらいすごい人なのだよ。だから周りが彼を知っていて、それでどんどん知り合いになって行くんだよ。」私「・・・。」

私完全に、業界新参者。これにはもうぐうの音も出ない。私完全に大バカ者。恥ずかしい。

こんな会話の1つ1つが本当に自分をインスパイヤーしてくれる。その反面、自分の無能さに腹が立ちます。ここの中に私がいるから私もすごいわけでは無い。例えばToyotaのような大企業で働いている人が皆エリートなわけじゃ無いでしょ?そうなの。私は本当に場違い。でもチャンスを活かさないとね。すごい人に囲まれて学ばせてもらい、センスを磨くしかない。学力では到底一番なタイプでも無い。これは誰にも負けないという一番なものを私は持ってない。でも他よりはジェネラルに色々経験しているのが私の強み?かなと良いところを必死に探してみる。だから他の人には無い感覚やヒラメキを私の場合は大切にしないとね、と言い聞かせる日々。周りになんて勝てるはずがない。とにかく周りを観察して学ぶしかない。あー、辛い。

そうそう、最後に嬉しい話も聞いた。書いても誰も見向きもしない論文は山ほどある!世の中の大半がそのまま眠っていると言われていたりもする。そんな世界で、今週オープンになった同じ研究室の学生の論文がすでにすごい反響らしい!スーパーバイザーの元へスーパーバイザーの知り合いからメールで問い合わせが来てるらしい。他に私も知っている今も時々研究室に出入りしている元PhDの学生もこの論文にすぐに気がつきメールくれたりしたみたい。それくらい色々なところで目に止まっているこの論文!これってすごいインパクト!聞くともう4カ国ぐらいから連絡が来ているらしい。本当にすごいものはすごいんだね。スーパーバイザーも嬉しそう。

事件は色々と起きてますよー

今週もあっというま。惰性で時間を使わないようにしないと。人生の時間は限られているのだから。では。